イラストは赤ずきんちゃん。秋色っぽくなってお気に入りです。
はじめに
言わずと知れたグリム童話「赤ずきん(英名:Little Red Riding Hood)」は、主人公の赤ずきんが猟師の協力の下、赤ずきんのおばあさんを食べてしまった狼を退治するお話です。
一方で「赤ずきん 狼と魔女」は、狼と赤ずきんの、種を超えた友情を描きたくて制作したものです。原作では可哀想な扱いを受ける狼(まあ自業自得なのですが)に焦点をあて、友情というテーマとして表現できないかと考えました。
せっかくなので、このテーマに対して当時エクセルにだらだらと書き綴った内容の一部を、頭の中の整理も兼ねてここに書き置いておくことにします。
友情というテーマ
友情というテーマを描くに辺り、いくつか固めておきたい設定事項がありました。
性別
友情は女性間のものとしました。これは消去法で決めたものなので、改善の余地があるかもしれません。
まず、「男性×女性」だと、読み手に友情というテーマに没入してもらうのは難しいと感じました。男性×女性とするとどうしても恋愛要素に発展してしまいがちであり、読み手もそれを期待してしまう部分があると思ったため、友情を描くに辺りふさわしくないものとしました。っていうか、男女間の友情を描いた作品ってあるんですかね?ちょっと調べてみようかな。
次に、「男性×男性」だと、これは私の力量不足なのですが、どうしてもBL要素、ホモ要素を匂わせてしまうため、これもあえなく没になりました。そもそも原作の赤ずきんが女性なので、ここを男性にしてしまうと物語の入りから読み手が困惑してしまう気がしたのも没にした一因です。逆に言えば、そこをうまくクリアしてしまえば、男性の赤ずきんを主役に据えるのも掴みとしてはアリでしょう。
話がそれますが、漫画「H2」で、ピッチャーである国見比呂がマウンドに立ち、バッターボックスの橘英雄と対峙した場面。比呂は英雄に勝つために変化球を投げようとしたが、変化はかからずストレートになってしまった。一方、橘英雄は比呂がストレートで来ると信じつつも、心の何処かで変化球を投げると疑心が生じ、変化球に合わせた結果空振りに倒れてしまう。
お互いをリスペクトしつつも必死に勝ちに行った結果、お互いにしこりを残す結果となった。この苦い友情、読んだ当時は震えた記憶があります。
いずれにしても「男性×男性」の友情を、男女共に受け入れられる形で表現するのは難しいものです。これができる方は尊敬します。
このような消去法で「女性×女性」の友情を描くことになりましたとさ。
種族間を超えた友情
忠犬ハチ公
例えば、動物と人間の友情などは昔から多く作品化されていますよね。すぐに出てくるところでは、「忠犬ハチ公」や「フランダースの犬」などでしょうか。
これらの大作の存在故に、動物側が、主人の傍や主人を想いながら息を引き取るという演出はもはやありがちなものとなっていますが、それでも、その忠義や健気さには問答無用で涙が出てしまいます。
本作では、孤独な赤ずきんが、昔に出会った狼にだけは心を開くというストーリーを展開することで、「人間と動物の友情が、人間間の友情に優先される」場合もある、というところを表現したかったのですが、メインストーリーの進行上、十分な表現には至りませんでした。。。
これは、狼の少女を極めて人に寄せて表現していることにも原因の一つでしょう。人狼などの半獣人を人間に寄せるか、獣に寄せるかで物語の進行は随分変わりますね。前者は日本で、後者は外国で受けやすいテイストでしょうか。
ブラックジャック ©手塚治虫
また話がそれますが、ブラック・ジャックの人食いシャチが怪我を負い、BJの下に真珠を何度も運んでくる話。あの話はシャチが乱暴者でよくよく読むと自業自得な部分もあるのですが、それでも悲しみで心動かされてしまうのは、このテーマの強さなのではないでしょうか。
ベイマックス ©Walt Disney
最近?ではベイマックスでも泣けました。人間とロボット物も王道ですね。
待ち受ける困難と克服による友情の成長
そもそも友情ってどんな時に強くなり、どんな時に綻ぶのだろう。友情をテーマにする以上、ここをはっきりさせて物語の進行に組み込む必要があると考えました。友達が少ない私が数少ない経験などから絞り出した内容の一部が下記になります。
友情が育まれるケース
・困難や逆境を共に乗り越える
・価値観、趣味、秘密の共有
・食べ物などを分かち合う、プレゼント
・喧嘩からの仲直り
など
友情が綻ぶケース
・相手に期待しすぎる時、多くを求め過ぎる時その期待値よりも少ない時
・他の友だちとばかり仲良くされている時、転じて蔑ろにされていると感じる時
・裏切られたと感じる時
・価値観の相違
など
物語に緩急を付け、魅力的なものにするために「困難や逆境を共に乗り越える」という要素に特に重きを置きました。そのために少女たちの友情を引き裂くことを目的とした「魔女」の存在を設定しました。物語上、直接友情を引き裂くことを目的とした狙いは物語をシンプルにわかりやすくすることです。あくまで友情というテーマを中心に据えるという。。。
魔女は狼の少女を手元に置いておこうとします。ただし、それは対等な友としての関係ではなく、あくまで自分にとって都合のいい存在としてです。ですが魔女はその自覚があまりなく、容姿や希少性のみを見て自分の友になるにふさわしいと、自己中心的な欲求を狼の少女にぶつけます。
この魔女の友情観には、少女たちの無垢な友情との対比という狙いも含んでいました。
以下、ネタバレ含みます。
守られない約束と別れ
友情を育んだ結果、下記を理想の状態としました。物語が完結するまでに理想の状態となることを目指します。
理想の状態
・離れていても寂しくない、友情はココロの中にあるのだから。
・変わっていく友人も受け入れられる。どんなアナタでも友達だよ。
魔女の嫌がらせと数々の逆境を乗り越えるも、最後には二人は離れ離れになってしまいます。二人が交わした約束は守られることはありませんでした。ですが、狼の少女は絶望すること無く、新しい一歩を踏み出します。最終的に離れ離れとなるENDは色々な作品で使われていますが、別れのENDは個人的に好きな方です。別れ方にもよりますが、基本的には新たな旅立ちを予感させるからでしょうか。
終わりに
「ありきたりな友情」に的を絞って物語とするのは中々大変でしたが、ご好評をいただくところもあり、個人的には及第点かなと思ってます。機会があれば物語をより推敲してセルフリメイクしてみたい野望もありますが。。。
ここまでご覧頂きありがとうございました。